うみあDM戦記

DMについて、いろいろと

環境に対する主観

 某氏による環境に対する思いがつづられたブログが反響を呼んでいるが、初の記事となる今回は「どうしてこのような環境となったのか」について、新殿堂からの環境を振り返りつつ少し考えたいと思う。

 

・環境の振り返り

 

 2017年3月、新たな殿堂レギュレーションが施行された。

 これまでの環境を彩ってきた様々な強カードの殿堂。ミルザム、ジョバンニのプレ殿により姿を消した天門ループ、ジョバンニスコール。最強のハンデスクリーチャーブラックサイコを失った赤黒廃車。デッキの核であったマナロックとイーヴィルを失ったバスター。GP2位を勝ち取ったオプティマスも、サルも……ループ系デッキの核の多くが殿堂してしまった。

 これは、運営側による「既存デッキの多くを弱体化、消滅させることにより、初心者にも参入させやすくする」という思惑が働いた結果であることは誰の目からしても明らかだった。

 しかし、皮肉にもこの殿堂により環境は真逆の方向へ向かうことになるが……。

 

 

 さて、この殿堂を1月末の時点で聞かされたプレイヤーたちは次の環境は「ビッグマナ」「ロージアダンテ」「サザンルネッサンス」のあたりが多くなると考えた。これらのデッキは殿堂による被害を一切受けておらず、目の上のたん瘤だった存在が消えた形になったからだ。

 そして迎えた2月28日の日本一決定戦。新殿堂施行日一発目の公式大会となったそれにおいては、やはり読み通りというべきか、サザンやロージアダンテといったデッキタイプが多くを占めていた。

 しかし、決勝戦で鉢合ったのは「白抜きランデスビマナ」と「デアリモルネク王」であり、結果的にモルネク王が優勝した。マナロックの殿堂で弱体化が予想されていたデッキタイプだっただけに、(ミラダンテ読みの構築がうまくマッチした結果だったとはいえ)予想外の結果となった。

 

 その後、しばらくはCS優勝デッキにおいて多くのタイプのデッキが犇めき合うこととなる。

 イーヴィルヒートを失い遂に終わったと思われたドギラゴン剣であったが、特にリンネヴィーナスとホネンビーにより即座にリペアされた5C剣がいち早く復活。その後、次元の霊峰を用い4tキルに特化した構築のシータバスターなどが結果を残し注目を浴びた。

 

 一方で怪しい動きを見せつつあったデッキがあった。ひとつは自然単サルループである。

 ゴエモンキーが一枚制限になり、よく知らない人間が見ると「相当な弱体化」をしたように思われたサルループであったが、実態は全く違ったものであった。

 サルは、一枚でも十分回ったのだ。空いた枠にマナ回収カードを入れることでほぼ同じようなことは十分実現できていた。

 しかし、この時点ではまだそこまで暴れまわることにはならなかった。

 

 モルトNEXTも徐々にその凶悪性をあらわにしようとしていた。ファイナルメモリアルパックに収録された「伝説のレジェンド・ドギラゴン」を、既存のメガマナロックの枠に入れ替えた新生ドルマゲドンモルネクが徐々に各所で結果を残し始めたのだ。

 この構築において、実質的にSAでないドラゴンはバトクロスとピンのマナロック、ミツルギブーストだけ。

 スクランブルチェンジの使い道のほとんどがマナロではなくモルネクになったことも相まってこの構築はバトライ閣との相性が驚異的なものとなり、これまで以上にとんでもない殺戮力を持ったデッキとなってしまった。

 

 そしてそんな中期待の新シリーズ第一弾、「ジョーカーズ参上」が発売される。既存の無色サポートカードとの相性が危惧されたジョーカーズはその予想通り、発売当初から各所のCSで結果を残すこととなりトップメタの一角にすんなり加わった。

 

 ただこの弾に搭載されたカードで既存のデッキに大きく影響を与えるカードはほとんどなかったが、一つだけ例外があった。「桜風妖精ステップル」である。

 2マナで1マナ加速できる「クリーチャー」である彼女は、当然のように自然単系デッキに組み込まれていく。特にベイBジャックとの相性は目を見張るものがあり、実質2コスト2マナ加速となるこのカードはサルループの更なる強化、高速化につながった。このカードのおかげで安定して4ターン目にはループを開始できるようになっただけでなく、最速後攻3ターンループすら可能になったのだ。

 またその頃には研究が進み、サルのリペアとして「大勇者『鎖風車』」と、ループパーツが一枚で収まる「大砕神グレイトフル・ライフ」を採用した通称「チェンストループ」が結果を残してプレイヤーの間に広がりつつあった。

 このデッキはただただサルのリペアなだけにとどまらず、サンマッドが3打点、鎖風車が2打点もちのクリーチャーということで非常に殴る際の攻撃力も高いところが特徴であり、ヤドックを立てながら殴ることによりモルトNEXTに対して実は有利を取りやすいのも恐ろしいところであった。

 

 そしてプレイヤーは、このとてつもないパワーを誇る2つのデッキに集中し始める。特にモルネクはサルループほど難しいプレイングを要求しない(勿論考えないデッキと言っているわけではない)ため、時が経つごとにますます使用者が増えていった。

 そんな中で行われたDMGP4thは、やはり参加者の大多数をモルネクが占めた結果となった。

 優勝はなんと受け重視のモルネク王であったがこれもいわゆる「モルネクにつよいモルネク」であり、やはりスクチェナ型のモルネクが多いことを如実に表した結果とも言えよう。

 ベスト4にモルネクが2、サルが1、ジョーカーズが1という結果はまさにメタゲームの環境をそのまま表しているといっても過言ではない。

 そしてGPの結果が証明してしまった強さをもとに、今もモルネクを主体とした超高速環境が続いている。

・どうしてこの環境はいけないのか

 以上を読めばある程度分かったと思うが、今の環境は当初運営が予想した(であろう)環境とはかけ離れている。

 もちろん、ボルバルザークの時期のようにすべてが染まっているわけではなく他のデッキの優勝報告もよく上がっている。しかし、「この環境が健全であるか」と言われ首を縦に振る人はそう多くないと思う。

 非常に大きなデッキタイプとして、「コントロール」が死滅しつつあるのだ。どれだけ構築を練っても、モルネクとサルを共にとれるコントロールがどれほどあるかーー考えるまでもない。

 

 これまでの環境においても「速いデッキ」はもちろん存在した。最近で言えばレッドゾーンなどがそれに当たるだろう。

 しかし、それらのデッキが台頭してもコントロールはちゃんと息をしていた。それは攻めが非常に直線的で、十分反撃のチャンスが存在したからだし、新カードがそれをサポートしていたからだ。

 

 けれども、今の二大環境はともにそうではない。

 

 今のモルネクは、3,4ターン目にはスクチェンでコスト軽減した上にSAを付与したモルトNEXTでバトライ閣を出し、ATで延々とアタッカーを増強し続ける。その中で一度モルネクだったり永遠龍がめくれたりすると、それだけでゲームセット級になる。

 スクチェンがない時代は4ターン目にモルネクを出しても閣建設だけしてターンエンドだった。だからこそ、許された。返しのターンでそれを処理する猶予があった。

 さらに、あの当時はマナロが4投されていた。スクチェンを打った後出てくるのはマナロックだった。

 もちろんアレは鬼畜の所業だった。しかし、マナロというカードの性質上案外反撃に出やすかったのも事実だ。しかし今は、それもない。

 

一方サルは、盾を割らずに4ターン目にはループを開始する。コントロールにとって4ターン目といえばせいぜい、例えば裏切りの魔狼月下城を打つなりするのが限界である。しかし、あのデッキは魔狼だけで止まるデッキではない。やりようがない。

 

 はっきり言ってしまえば、これまでのデッキとは格が違うレベルで「理不尽」なのだ。久しぶりにデュエマを始めようと思った人が、初めてデュエマを始めようとした子供が、公認大会でこのようなデッキと当たれば、下手をすれば立ち直れなくなるほどのショックを受ける。

 私は革命編の途中からデュエマを再開した。もちろんあの時大流行していたバイクにたいして衝撃を覚えたし、ショックは受けた。しかし、アレは今ほどのものではなかったはずだ。なにせ、今の環境2デッキを同時にメタるのは非常に難しいのだ。

 

 かくして、本来はDMを始めるべきであるはずの時期なはずが皮肉にも全く異なる結果となってしまっているわけだ。

 

・運営は何を間違えたのか?

 もちろん、率直に言って制限するカードを間違えたというのはあるだろう。特にゴエンモンキーの制限はナンセンスであり、本当ならサンマッドやアラゴトムスビ、ベイBジャックにかけるべきだった。

 しかし、そもそもの話として最近のデュエマ運営が突き進めてきた「革命」の弊害がついに目立って現れてきたのではないかと思う。

 もちろん、ドラゴンサーガの失敗を糧として行われてきた様々な改善策は評価できるものばかりだ。それに関しては一切否定しない。

 しかし、その過程において「魅力を作るため」に行ったインフレがついに今になって「魅力を落とす」方へ傾き始めている。

 

 いつかのクリエイターズレターにおいて「我々は常に『ギリギリ』を目指してカードをデザインしている」と語られた。

 カードゲームという業界を続かせるためには、インフレは絶対必要である。ずっと同じような能力のカードばかり作っていても飽きるだけだからだ。

 しかし、今のデュエマはそのインフレする勢いを見誤った。やりすぎた。

 そしてさらに、そのインフレに対抗するためのカード軍を「新環境への期待」のために安易に制限した。

 

 ここに、すべての原因があるのではないかと思う。

 

 この構図を、自分は過去知っている。ボルバルザークへの唯一の対抗札だった「アクアン」が規制された時のことだ。もちろん今の2デッキはボルバルとは全く質の異なるものだけれど、この全体的な動きとしては似たようなものを感じる。

 

  今の環境に対しては賛否が分かれるところだが、そもそもここまでの状態になっていること自体が間違いなく「危機」だ。

 運営側が素早く、適切な処置を下すことを願いたい。